女性の健康課題

貧血と鉄欠乏について

鉄欠乏性貧血とは脳や体への酸素供給不足

貧血とは、血液の中の赤血球数の低下、または、ヘモグロビンの値の低下を来した状態の総称です。
貧血は幾つかの種類に分類されますが、貧血のうち約9割りを占めるのが、人の体には絶対不可欠の鉄栄養素である鉄が不足する鉄欠乏性貧血です。

ヘモグロビンの役目は肺で酸素と結合し、その酸素を全身の細胞に供給する極めて重要な働きをしますが、鉄不足はヘモグロビンの減少をまねきます。
そうすると十分な酸素を供給できない酸素不足になります。
特に40%の酸素を消費する脳への酸素不足の影響は大きく、貧血になると不定愁訴(めまいや頭痛、睡眠障害、全身倦怠感など)が起きるのは、鉄不足に起因する脳への酸素供給不足状態となるためです。

 

貧血ナビ

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気をつけないといけない鉄欠乏

人の体には約3〜5gの鉄があり、そのうち約2/3の鉄は赤血球のヘモグロビンの中、残りは肝臓に貯蔵鉄として、鉄が不足したときの貯えがあります。

ヘモグロビンの鉄はおサイフ、貯蔵鉄は銀行口座の残高に例えられます。 特に女性は生理で血を失い、おサイフの中身は減っていきます。この時に口座残高が十分あれば口座から鉄を引き出しお財布に補充します。

問題は残高が十分でない場合です。この場合は血液に鉄を補充ができない、潜在性鉄欠乏症となります。

この状況はヘモグロビン検査では基準値であっても、貧血を引き起こしやすい状態であり隠れ貧血とも言われます。
原因不明の体調不良、不定愁訴は鉄欠乏が原因となる事があります。

また鉄欠乏は脳の神経伝達に不可欠である基本元素の鉄の蓄えが低い状態でもあり、体の発育や心疾患に影響する要注意な状態です。※1 ※3

 

鉄はどれくらい足りていないのか?


 
鉄栄養素は食物から摂取しますが、吸収率は低く鉄分を含む多くの食物を食べる必要があります。特に動物性タンパク質食物が必要となりますが、現代の食生活習慣ではダイエットにもからみ食物だけからの鉄摂取は難しい背景があります。

厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要の鉄の食事摂取基準(mg/日)からは、実際の鉄摂取量は推奨値の半分にも満たず、特に妊娠後期では胎児への鉄移動が始まりますが、その場合は推奨値の1/4以下です。

貧血は基本的にはヘモグロビン濃度(b/dl)で判定します。男女ならびにライフステージで貧血疑い値は変わります。
成人女子:12g/dl以下
新生児:13g/dl以下
乳幼児:11g/dl以下
学童:12g/dl以下
高齢者・妊婦:11g/dl以下
成人男子:13g/dl以下
(出展:日本臨床検査学会)
 

貧血と鉄欠乏対策は子供とその先の世代のため


 
閉経前で鉄欠乏性貧血並びに鉄欠乏の日本の女性は22%にものぼります。
なおこの鉄欠乏は世界的には子供を含む大きな栄養上の課題であり、生育や発達における障害報告がなされており※1、また軽度認知障害との関係の報告もあります。※2

上記22%の統計は日本での貯蔵鉄の基準値から算出をしていますが、世界的には貯蔵鉄の基準値は各国で異なり、欧米での基準値を適応すると、日本の女性の半数は鉄欠乏の疑いがあります。※3

多くの国では貧血を大きな課題として認識しており、鉄を積極的に摂取できる様にシリアルや小麦粉に添加物として混ぜるなどの対策をたて、また啓蒙を行っています。
ところが日本は先進国では唯一行政的な施策や啓蒙などの対策をとっていない貧血大国です。※4

また女性の鉄欠乏は本人のみの問題ではありません。妊娠すると半数の妊婦が鉄欠乏になる統計があります。鉄欠乏は胎児や乳幼児へも影響は及びます※1。

必要となる事は、自分の貧血状態と鉄欠乏状態を正しく知り、その対策を取る事です。
鉄欠乏対策は成人のみならず、小児から思春期、成人、妊婦から胎児・乳児へと、女性のライフステージにすべてに渡り、本人とその子供、また次世代の子供達の健全な生育のためにとる必要があります。

 
出典

※1:Iron Deficiency in Children With Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder (注意欠陥/多動性障害児の鉄欠乏症)  Eric Konofal, MD, PhD; Michel Lecendreux, MD; Isabelle Arnulf, MD, PhD; Marie-Christine Mouren, MD 
日本人妊婦を対象とした非侵襲的ヘモグロビン 測定機器開発にむけての基礎研究 - 小児と思春期の鉄欠乏性貧血
※2:Anemia and Mild Cognitive Impairment in the German General Population Journal of Alzheimer's Disease, vol. 49, no. 4, pp. 1031-1042, 2016
※3:うつ・パニックは「鉄」不足が原因であった 藤川徳美著
※4:貧血大国・日本 放置されてきた国民病の原因と対策 山本 佳奈著